ザ・ダイアモンドDAYS


6時半に起床、8時少し前に家を出て、最寄の駅から僅か15分で青春学園中等部の校門だ。

周りで下級生が「おはよう。」と挨拶し合うのを聞きながら、足が自然に向かうのは下駄箱。
「今日は何もありませんように。」毎日そう願いながら開ける自分の靴箱も人気者になったものだ。

週に1度は手紙やメモが入れられるようになって、2ヶ月。
夏を前に男子生徒は彼女を作ることで躍起になっているようだ。

もう何回、呼び出され告白されたことか。
まるで見たこともないような男子に好き、何て言われても、返す回答なんて決まってる。





、今回は後輩だったんだって?」
今日も、見知らぬ男子生徒に私の貴重な昼休みの半分が潰された。
涼しい顔して教室に帰って来た私を迎える親友2人は、もう以前のように何と告白されて、何と断ったのか詮索を入れない。

さすがに飽きたんだろう。

私も断り飽きてしまった。




今さっき、体育館の裏側で後輩の告白を一刀両断にして、これ以上昼休みを無駄にはしまい、と大急ぎで下足を片付けに下駄箱に向かった。

そこでまた見つけてしまった。ノートの紙に「今日、18時に中庭で会えますか。」と几帳面な字で書かれたメッセージ。

会えますか、と聞かれても差出人がないのでは、はいもいいえも言えないだろ、と心で悪態をつきながら、上履きを履いた。















も誰かと付き合ってみればいのに。男性の好みとかないの?」
そしてやっとありつけたお弁当を頬張りながら、美奈子の言葉に少し昔を思い出した。

「14年間、彼氏はいなかったけど、好きな人はいたんだよね。もう何年も前だけど。」
何それ、初耳!そう身を乗りだす美奈子と幸子に、誰にも話したことのない昔話をした。

「私、小学校低学年の時、テニスしてたんだ。隣町の『ジュニア』ってテニスクラブ知ってる?
たまに他のクラブの生徒と一緒に試合する機会とか、小学生の地区大会とかあってさ、一人あこがれた男の子いたんだぁ。
名前も年齢も、どこのクラブの子かも分からなかったけど、2回その子のこと見る機会があって、3回目に勇気を出して、直接手紙渡したの。」

「それってラブレター!?」

「んー、ラブレターって言うかがんばって下さい、応援してますって。」
「なるほど、ファンレターか。」

「その子のテニス、本当に綺麗ですごく憧れたんだぁ。あんな風に私もなりたい、って。『ありがとう』って受け取ってくれた。
でもそれ以降私は私でテニスからバトミントンに転向したし、その子を見る機会もなくなっちゃったんだけど。」

「それがの初恋なんだ。」

「憧れの好き、だけどね。」
ふと見上げた前方の時計がほぼ13時を指しているのを見て咽返した。

「やば、お弁当まだ半分も食べてないのに!!」
「次、理科だよ。移動移動、諦めな。」




教科書とノートを持ってさっさと立ち上がった親友をこれほど薄情だと思ったことはない。