ザ・ダイアモンドDAYS


彼氏いない暦14年だった私に転機が訪れた。それは3ヶ月前、中学3年に上がった時のこと。
青春学園2年1組のと言えば、長いロングカールに、牛乳瓶メガネというあまりにも合わない容姿に学年内では結構有名だった(らしい)。

髪の毛については、小学生のころは『こいつパーマかけてるぜ!』なんて男子にからかわれて大変だった。冗談じゃない、これは天然パーマなのだ。
ゆる巻きで、本当にパーマをかけたように見えるのは認めざるを得ないが、私の苦労をあいつらは知るべきだ。
担任の教師が変わるたびに本当に天然パーマなのだと泣いて説明しなければならない私の苦労を誰が理解してくれようか。
私とは打って変わって妹は見事なストレート。『何で私はストレートじゃないの!?』と母親に食ってかかったものだった。









中学2年までかけていた牛乳瓶メガネが、クラスの生徒に与えていた私のイメージを知ることになったのは、中学3年に進級した1日目。
例年のごとくクラス替えが行われ、私は3年6組になった。
クラス替え発表の結果は手紙で家に送られてくるちょっと変わった青春学園のシステムだ。
2年1組から仲のよかった友達も3人同じクラスになって、春休み中はみんなでメールをやり取りして喜び合った。


もそろそろコンタクトにしてもいいんじゃない?』
そんな母親の提案で、コンタクトレンズをもらいにいった春休み最終日。
いよいよ最終学年が始まるのか、と期待と中学3年最後の1年という響きの寂しさを抱えて出向いた4月7日、校舎2階の3年6組。



春休み中メールを交換していた美奈子と幸代の姿を見つけて『おはよっ!』と声をかけた。今までと何も変わらない挨拶。
振り向いた二人は「は?」という表情をして、そのまま停止モード。

2人の目は間違いなく私の顔を捉えている。

「ちょ、ちょっと。私の顔に何かついてる?」
「まさか!?」
「…そうだけど。」
「「ええええええ!!!!!!」」

人に指を向けて椅子から飛び降りる勢いで驚く親友2人のあんな驚愕した表情は見たことがない。
「ちょっとどうしたの!メガネは!?」
「1週間前からコンタクトにしたの。」
「人物変わりすぎだよ、!!すごくかわいい!!」
「…2人とも驚きすぎ。」



酷いなぁ、なんて2人をからかう様に言ったけれど、彼女たちのリアクションはまだマシなほうだった。
牛乳瓶メガネのころの私を知る6組の男子に挨拶すれば「…知り合いだっけ?」とか言われるし、
委員会でペアを組んでる菊丸君なんて「あれれークラス表にちゃんいるって書いてあったのに、どこかにゃー!」なんて人の真横の席で言ってるし。

それを聞いた彼の友達(不二君という)が「ちょっと英二…。」って何かアドバイスを入れていた。
その直後「え?」って首を90度動かして私を見た菊丸君は「嘘っ!!どうしたのあのメガネ!」ってやっぱり机から飛びぬかん勢いで驚いていた。




















「そんなにヒドかったのかな、あのメガネ。」
昼食中、ボソリと呟けば美奈子が「そうゆうわけじゃないけどね。」と笑った。

「確かにあのメガネが与えていたの印象は絶大だったよね。もう何ていうか、簡単にいうと『がり勉です!!男に興味ありません!近づかないで下さい!!』みたいな。」
幸子が卵焼きを頬張りながら言って、私はジュースを噴出しそうになった。

「でも今は髪の毛のカールもバッチリ合ってて大人、って感じ!そんな可愛い素顔、何て今まで隠してたの?私たちだって気づかなかったよ。」

「可愛いい?自分の顔は毎日鏡で見てるけど、別に可愛くなんかないよ。」
「いや、可愛いね。私たちより男子が絶対そう思ってるよ。」

「そうだね、うちらと賭けない?今月に告白する男子がいたら、うち等にあの駅前のケーキ屋のモンブランを奢る!!」

「私が勝ったら?」

の誕生日はディズニーにご招待♪」

「乗る!!!!!!」




14年彼氏のいない私が今になって告白なんてされるはずないと100%の自身を持って承諾した賭けだった。






この2週間後、まさか自分がモンブランを親友に奢ることになるなんて、この時の私は想像すらしなかった。