ザ・ダイアモンドDAYS


、暴れてきな。」
竜崎先生の期待に答えたは見事に6−1で相手を下して、拍手喝采の中ベンチへ戻ってきた。

「ナイスゲームだった。」
手塚君のフィードバックに蔓延の笑みで駆け寄ってきたは飛び込むように私の横へ腰掛けた。

「来るなら言ってくれればいいのに、姉さんも人が悪いよな。」
と同じ事言うね。驚かそうかなと思ってさ。」

そんな私達の横ではのプレイにお母さんが感激のあまり泣いていて、ハンカチで目を当てている。
仕事ではバリバリのキャリアウーマンが、子供のことになるとこんなにも性格豹変する、そんなところが好きでお父さんはお母さんを選んだんだという。
結局青学がストレート勝ちして、練習試合は閉幕した。
は一度学校に戻るらしく私はお母さんと帰宅しようと立ち上がった。
久しぶりに見たテニスコートをもう一度見渡して振り返ると、青学高校の応援団も帰る準備をしているようだった。

「あ、ー!これから中学のメンバーと打ち上げ行くんだけど一緒に行こうよ!」
大きく手を振るの勧誘に私はお母さんと顔を見合わせた。
も学校から直接行くって言ってたわよ。もご一緒させてもらえば?」

「帰りは俺が送る。久しぶりに騒がないか。」
迷っている私の横で、手塚君が誘う。彼が打ち上げだから来いなんて、積極的に誘うことはとても珍しい。
瞬時、吹いた暖かい秋風に気持ちは晴れ晴れしていた。


来週からまたピアノの毎日が始まる前に、最後の気分転換だと、温かい風に促されて頭をゆっくり上下させた。

「国光君、打ち上げって?」

「今日はカラオケだそうだ。」
































大広間を貸しきった打ち上げカラオケは、終始ドンちゃん騒ぎで、3年前青学の全国大会優勝のときの打ち上げ並みに盛り上がった。
同じ空間にいる元彼を意識することなく、だけど無視するわけじゃなく、まるで他人のようにしているこの感覚は苦じゃない。




こんなに簡単だったんだ。


元彼だと、好きだった人だと意識するからこそ絡みに絡んでいた感情が、今は嘘のようにストレートだ。
手塚君と乾君のデュエットは下級生からカメラを受けられる最大の対象となった。

その直後、リスニングに回って桃城君達との会話を楽しんでいた私に、がマイクを向けたのを私は始め一刀両断で断った。

、じゃぁ一緒に歌おう!」
「俺も先輩の歌聴きたいっすよ!」
「姉さん、歌上手いだろ。嫌がる理由が分からないな。」

そんな声に押されながら、「いや、いい。」と言い続けていたのに、「じゃ、この曲ね!!」そうが勝手に入れた歌を嫌々歌わされる羽目になった私は、今マイクを握っている。

人前で歌なんて、中学2年の時彩林中の子とカラオケに行った以来。
絶対音外すな、そう覚悟して私のパートを歌い始める。

りん、うめー!!がんばれ!」
「うるさいなぁ!」
菊丸君の背中をバシバシ叩くと菊丸君を見ていたら、また目頭が熱くなってしまった。
私の恋愛が砕けたせいで、交差しなかったと菊丸君の関係がようやく交じり合ったんだ。



が入れたこの曲の一フレーズ一フレーズすべてが私と彼女の置かれていた状況を表しているようで、感情移入なんて私らしくないことをした。
ゆっくり終わりを迎える曲、歌い終わった私はマイクをテーブルに置いて、壁に身を預けた。


「ねぇ、。」
「ん?」
「今まで心配かけてごめんね。」
男の癖に涙もろいのは母親からの遺伝だろう。「いいよ、別に。」不器用に紡がれた声が少し震えていた。






もう大丈夫。
、菊丸君、ありがとう。




「姉さん、明日捨てた分の楽譜買いなおしに行こうぜ。」
そんな暖かい弟の言葉に頷いた。