ザ・ダイアモンドDAYS


「おーい!手塚ぁ!」

「あいつ、女の子連れてるにゃ!!」

「おい、あれって。」

!?」

続々とガタリ、立ち上がる音を横耳に、手塚君に案内された席へ向かう。の後姿を確認して、音のした方向を振り返った。

「久しぶり、桃城君、大石君。」
笑った私に菊丸君の隣に座るが手を口元に、涙を溜めた。あの子は本当に涙もろい。
菊丸君は彼女の肩に手をやってVピースしている。

、来るなら言いなさいよぉ!」
「ごめん。がいるなんて思わないしさ。」

私のところまで駆け下りて抱きしめた力は強かった。
「予想外だな、が来るとは。」そう言ってノートに何かをメモするクラスメイトに苦笑した。


先輩、本当久しぶりっす!俺、マムシに来るように電話してきます!」
海堂君は青春学園高等部へ進まなかった。今日もきっと自主練に忙しいんだろう。「悪いからいいよ。」そう言おうと思ったけれど、桃城君はすでに携帯電話を持って走り出していた。

、今タカさんが飲み物を買いに行っているんだが、何か飲みたいものはあるか?」
「そうだな、じゃぁレモンティがいいかな。」
乾君はそれを聞くと携帯電話を取り出して、河村君に発信した。

「あ、タカさん。レモンティを一つ追加してくれ。…ああ、頼むよ。」

「乾君、ありがとう。」

「それにしても、私服は雰囲気違うなぁ!さん、何かすごく大人っぽいね。」

「ちょっと大石ぃ!何抜け駆けしてんのさ!」

菊丸君の言葉に一同が笑いに包まれる。
みんな外見は大人になったけど、やっぱり性格は中学の時と雰囲気は変わらない。みんなに笑顔を返して前方にいるお母さんの隣に腰掛けた。







こんなに久しぶりに姿を見せた私に、みんな何も言わない。

どうしたの、とか。何で来たの、とか。それがとても救いだった。

あの人の元カノとしてではない、私を一人の友人や知り合いとして見てくれているから。

他校から青学に入った部員はきっと私のことを知らないだろう。それでいい、もう過去の私を引きずってはいたくない。

























「おーい、みんな!飲み物買って来たよ!」
数分後、後方から河村君の声が聞こえて振り返った。

そして同時に目に飛び込んできたのは、河村君の横に立つ、あの人。
一緒に買出しに行っていたのだろう。



ずっと直視できなかった人、会いたくないと思っていた。
袋に飲み物を提げて、一人一人に配っている。私にはまだ気づいていないようだ。


『これは、誰に?』
きっとそんなことを聞いているんだろう。レモンティの缶を持って乾君の前に立つ不二周助がいる。

「ああ、それは…。」

ー!飲み物来たよ!」
乾君が缶を受け取ろうとした瞬間、それを見ていたが大声を上げた。さすが演劇部、肺活量はハンパない。
乾君は私と不二周助を会わせることを躊躇していたのにこの子の大胆さといったら。でも、彼女なりに私を理解してくれての行動なのだろう。
もうきっと、私は「大丈夫」と思っているから、機会をくれた。

そんな彼女に彼氏の菊丸君は手を額に当てて笑っている。











「レモンティは私のかな。」

受け取りに腰を上げて、みんなが座っている2段上階へ階段をあがる。

ドクンドクン、胸の鼓動が、彼に近づくたびに大きくなる。

当の本人は、うん。驚いてるよね、やっぱり。こ

んなにいきなり現れて、ずっと無視を決め込んできた私が本人の顔を見ているんだから。

「ありがとう。」
「あ、…うん。」
本人の手から缶を受け取る。彼の指に触れるか触れないか、そんなあいまいな距離で私の指が缶を掴む。

青学生徒の視線が私達に集められているのが嫌でも分かる。「やったね。」そうと菊丸君はハイタッチ。

缶を受け取って緊張のあまりなかった感覚が、「姉さん!?」そうテニスコートから声を上げたのおかげで現実化する。





「…っ冷たーい!!」

「あ、ホットが良かったのか。悪い。」

思わず落としそうになった缶を反対の手で握り締めた私を笑う声が、青学ベンチで沸いた。