伝説
伝説之四
「導師、先にヒカル達を連れて大広間に。どうか、私をもう少しだけ此処にいさせてください。」
プレセアは右腕で左肩を抑えながら消え入るような声で残ることを願った。
「いいだろう。」
瞬間、昔良く目にした風景が脳裏を掠めた。今はもう思い出すことしかできないプレセアと戯れるの幼い姿。
クレフが大広間への道を開き、皆を連れて行った後、プレセアはの前に立ち直す。
「久しぶりね、。」
笑顔で話しかけたつもりが、声を発するごとに、彼女に向き合うだけ流れる涙が止まらない。
友の名前を呼んでも返ってくる返事などない。
あのころのように優しく笑い振り向いてくれる彼女がいなくなって500年。
その瞳は今なお開くことを知らない。
氷の壁につかれた手は徐々に温かさを失っていく。
「プレセア。」
崩れそうなところで呼ばれた名前に、ハッと振り返るプレセア。その瞳からは涙が伝っている。
「ど、導師・・・。」
ヒカル達と一緒に戻ったままと思っていた。
「泣くな、プレセア。が言っていただろう。お前の泣き顔を見るのは嫌いだと。」
命令形で言っていてもその口調は優しい。
"プレセア泣かないで。プレセアにはいつも笑っていてほしいのっ。"
子供のころ、そうあれはまだ私たちが幼かったころ。
創師の修行で上手くいかないとき、先輩弟子にいじめられた時、いつも隣で話を聴いて慰めてくれたのはだった。
真剣な顔で言ったに約束した。
強くなると。そして立派な創師になると。
いつも笑っていよう、笑顔のプレセアになるんだって。
それから泣く回数もへり笑顔でいることが普通になった。
なのに・・・今あなたの前で泣いてしまうなんて。バカね私ったら。
プレセアは涙をぬぐい立ち上がる。
「すみませんでした。導師、ヒカル達のところへ戻りましょう。」
些かしっかりしたプレセアの言葉を聞いたクレフは移動の魔法陣を描く。
二人が光に包まれた時、
「また、来るわ。」
そう呟いたプレセアの言葉をクレフは受け止めた。
「でもほんまびっくりやな。まさかあの導師はんに娘さんがおったなんて。」
大広間に戻り椅子に腰かけたカルディナ。
「その歌法伝来師っていうのがヒカル達の国におんのやろ?
ほんでセフィーロに帰るためには・・・。お嬢さん方こんなところにいていいんか?」
真剣なカルディナの言葉に三人は最悪の状況を想定した。
もし地球が本当に滅ぼされたら・・・・・。
下を向き冷や汗をかく三人を見たランティスは思いがけない一言を発する。
「お前たちの星は心配ない。」
「どうしてランティスはそう思うんだ?」
「お前たちが受け取ったと言っていたあの腕輪は歌法伝来師が任務を終えたときセフィーロに戻る際不可欠なものだ。」
「それをお前たちに渡したということは、もうこのセフィーロに戻る気がないということだろう。
導師クレフもその意図に気づいていたはずだ。・・・あんなお顔をされた導師は久しぶりにみたな。」
「でもッそれじゃぁ!!!クレフとさんは・・・・っ!!!」
ヒカルが言いかけた時、ぱぁっと照らされる床。 そして数秒後大広間に移動の魔法陣が現れた。
魔方陣が消えると同時に現れたクレフとプレセア両者が席に着いたとき天窓から流れる風はとても優しく温かい。
自然に風に誘われるように一同は天窓へ顔をあげた。
「綺麗だね。」
アスコットは何かにあこがれるように言う。
空には一面に輝くのは幾千の星。
「ほんまやね。キレイやわ。」
「いらない星でも他の星から見る者に夜こんなにも美しくその姿を現してくれる。」
存在が無なわけではないのだ、たとえそれが宇宙にとってはゴミのような存在だとしても。
、お前はこの星たちのどれかにいるのだろうか
目を閉じれば今でも鮮明に蘇ってくる記憶。
記憶を逃がさないように失わないようにいつも心にとどめてきたこの500年。
いつか必ず還ると信じて。
「・・・少し話そうか。500年前の昔話を。」
声はまるで子供におやすみの読書をするかのように柔らかく
クレフの顔は先ほどまでの悲しさや、やるせなさに支配されたものではない。
優しさと威厳の中に光、海、風は500年前のクレフの表情を見た気がした。
