伝説
伝説之十四
嘘に決まってる。
クレフがさんを捨てたなんて何かの間違いだ。
一体何がどうなってこんなことになっているのか確かめなければ、それしか持ち合わせている感情がいまのところ見つからない。
原因が分かるまでは彼女を連れ帰るという計画は中止せざるを得ない。
とにかくが本をあずけたと言っていたプレセアに話を聞きに行こう。
願いを叶えてくれと頼まれた内容、つまりリバティを殺しを消滅させるなんて3人全員一致で実行する気はさらさらない。
人が死んで解決する問題なんて何もありはしないのだから。それはきっと私たち魔法騎士が一番良く知っている。
同じ意見をもって再びセフィーロを訪れた3人をプレセアはいつもの笑顔で迎えた。
「プレセア、見つかったんださん。」
お茶を入れてもらってプレセアが腰掛けたところで光は単刀直入に切り出した。正直、貼り紙だけで見つかると思っていなかったから探していた自分達ですら驚いた。
500年彼女と会えていないプレセアは案の定もっと驚いたようで、貼り付けたようなまん丸の眼を動かさず停止した。そして手を震わせ、瞳に涙を溜めていった。
「元気に、してた?」
「はい。現在はさんと名乗って生活しておられます。私たちより数歳年上です。」
「地球では1500年経過してるらしくて、何度も生まれ変わってはセフィーロの記憶をもってるんですって。」
「1500年・・・?」
「プレセアさん、このことクレフさんや他のみなさんにはどうかまだ内緒にしていただけますか?」
「どうして?導師もきっと心からお喜びになるはずよ。」
「実は、わけが分からないことになってるんだ。」
「導師が・・・嘘でしょう。それはが言ったの?」
「申し上げにくいですがその通りです。」
導師クレフがの帰還路を遮断した?考えたくないが、それを前提に考えると大観覧室から隠した本が消えたことも辻褄があう。
私は導師にあの本の開け方のヒントを貰いに行った。彼は私があの本を持っていると知っていた。
何処に隠したかなんて言わなくても、あの人なら検討くらいつけることが容易に出来るだろう。
姉、プレセアでさえ知らない本の存在。本人と私と導師、他の人間があの本の存在を知っているわけがない。
「フウとヒカルを廊下で鉢合わせた時、私あのあと預けられた本の存在を確認に行ったのよ。でも隠した場所にその姿はもうなかった。」
でも何故導師が。
「さんは、クレフが歌法伝来師の存在を疎く思っているんだって。だからセフィーロに帰ってほしくないんだって言っていたわ。」
何故?
一番に会いたいと思っている人間が本当にそんなことをしたの?あの導師クレフが?
「・・・確かに。何かがおかしいわね。」
導師クレフという存在を知っているからこその疑問。いくらセフィーロを優先させた結果だからと言ってそんな簡単にあの子を突き放すことなんてあの人に出来るわけがない。
目の前で唇をかみ締めている光の苦痛な表情にプレセアは驚いて手を伸ばした。
「さん、最後に言ったんだ。前回持ってきた腕輪をリバティが持っている本にはめてくれって。」
「そうするとどうなるの?」
「リバティさんは死ぬ、と仰っていました。そして地球に存在する意味がなくなったさんは・・・消滅する、と。」
こんな話を導師クレフが聞いたらどうなるだろう。流れた一筋の涙も気にせず机に目を落とした。視界が歪む。
私の知らないところで何かがあったんだ。それを確かめなくてはならない。3人の少女達も同じ気持ちで来たのだろう。
「3人とも悩んでも仕方ないわ。導師を問い詰めましょう。」
立ち上がり、3人の異世界の少女たちに何年ぶりかの魔法騎士の防具と武器を授けた。この防具と武器があれば3人はマシンを呼べる。
本来なら柱を殺すためのマシン、リバティという存在はから聞いたことがあった。相手がマシンならばこちらもマシンを装備して損はない。
「導師を問い詰めて、“私が“預かった本を取り戻しにいく。」
