伝説




伝説之十三






カフェで3人の魔法騎士と別れ、新宿駅に隣接する展望台に足を向けた。 行きかう車も、帰宅を急ぐ人の波にももう慣れた。 初めてこの国に降り立ったのは平安時代と呼ばれているころ。気付けば道で倒れていたところをある家族に拾われて養ってもらった。 あの暖かさを受けてしまった時からこの星を滅ぼすことを諦めていたんだ。 一度寿命で死んで生まれ変わった、あれは戦争の時代だった。 被爆して死んで、また生まれ変わってを繰り返して現在私はこのとしての人生を歩んでいる。 チン、と音を鳴らして展望台到着の合図を告げるエレベータを降りれば沈みかける太陽が目の前に広がった。 「還る場所か・・・。」 そんな場所が私にもあると思っていた。 リバティの記憶が流れ込んで来て初めて理解した「あの人」とセフィーロの意思。 セフィーロに歌法伝来師は必要ない。 自分の存在を否定されてしまったんだ。 歌法伝来師になるために血が滲むような努力をしたのに結末、捨てられるなんて何て滑稽なんだろう。 「還る場所はグル、あなたの所と思っていました。」 本人に届くわけのない一言、それが嘘じゃないからこそ、伝う涙に崩れこんだ。 周りのカップル達が何事かという視線を向けてきたけれど、気にならなかった。 それよりも真っ赤な太陽に、セフィーロの夕焼けを思い出そうとしたけれど思い出せなかったことが悲しすぎて泣いた。 薄れていくセフィーロの記憶 疎い歌法伝来師の能力 信じていたものに捨てられた自分という存在 それももう少しで捨てられると思いたい。 「・・・クレフにリバティの場所を聞いて、殺したとしてさんはどうなるんだ?」 3人から聴こえる拒絶の旋律にフォルテをかける発言も躊躇いはなかった。 「リバティが死ねば歌法伝来師が存在する意味がなくなる。私は元々セフィーロ人間、リバティが死ねば私が地球にいる意味がない、消滅するわ。」 絶句した3人を置いてカフェを出た。 魔法騎士達に会うことは二度とないだろう。 彼女達が私のわがままを叶えてくれるかは分からないけれど、そう願いたい。 死の瞬間、エメロードが幸せだった様に、私も幸せになれると確信があるんだ。 死ぬことで得る幸せなんて歌法伝来師が口にしたことを知ったらシエスタ、あなたは怒るだろうね。