「冷えるな。」
「そうだね。」
今日アジトで時間を過ごしているのは団長であるクロロ・ルシルフルとハザマ・ノブナガそしてマチだ。
「そういやあいつも寒いのには弱かったっけな・・・。」
今頃凍えてるんじゃないか、とノブナガがおかしく笑った。
「ノブナガ、お前はが生きてると思うか?」
本に目を走らせながら脇においてあるコーヒーに手をつける。いつもの威厳に満ちたクロロの声ではない。
平然を装っているが、が消えたときのあの心の傷は今でも癒しきれていないのだろう、どこかトーンが下がっている気がする。
「どうだかな。でも自分の命は大切にするやつだったろあいつは。」
「そうだね、自殺ってことは・・・ないだろうね。」
死んでいるとは思っていないし望んでもいない。死んでるなんて分かったときにはまた蜘蛛がシケた雰囲気になっちまう、だから生きているということでいいだろ。
「ただいまーってあれ、ノブナガがいる。」
廃墟に帰ってきたのはシャルナークとパクノダだ。
次の仕事の情報収集に出て2日ほど経っていたはず、今日は大方団長に報告に来たのか。
「ノブナガとマチか、ちょうどいいな。」
とりあえずこれお土産、と差し出されたのは団長が気に入っているケーキ屋のプチフール。
それを受け取ろうと手を伸ばしたら、さっとその袋をシャルの後ろに隠された。
「をい!」
「っとケーキの前に。実はもう一つ、土産話もってきたんだ。」
不適に笑みを浮かべるシャルナークに注目の視線があつまる。
「それもとっておきのね。」
パクから伝える?とシャルが視線を投げるが、当の本人はらしくもなく少し涙を目に浮かべている。
「ちょっとパク、一体どうしたって言うんだい?」
マチとてパクノダの涙を見ることなどこの数年あったことじゃない。正確に言えばがいなくなった日以来だ。
「シャル、じらすな。」
静かに威厳のある声が響く、その目は相変わらず本に向けられてるけれど。
簡潔に言うよ、そう置いてシャルも遠くに憧れを見るかのように優しく呟いた。
「、見つけた。」
「というわけだから、とりあえず迎えに行ってみない?」
反応の声が聞こえない静寂に耐えかねて続ければ、さっきまでクロロの膝上に置かれていた古書が音を立てて地面に落下した。
クロロ同様マチもノブナガも信じられない物を見たように目を俺に向けている。視線いたぁー。
「何それ・・・。何の情報?」
今までシャルナークが探しても見つけられなかった彼女の所在をたかが2日。
しかも他の用で出かけてポンッと持って返ってきたシャルナークとパクノダがまず信じられない。
だがそれは冗談なんかじゃないはずだ。そんな冗談、ふざけてでも言ったら団長に殺されることくらい私らみんな分かっている。
「今度襲う予定だったマフィアの家、誰もいなくてさー。無駄足と思いつつ内部調べてたらこんな紙を見つけた。」
シャルがパクってきたそれは会員制超高級クラブの報告書らしき文面。
そこに示されているのは「・ラプソドル」という名前に身体の特徴と勤務実態。
「のファミリーネームはだからラプソドルっていうのは偽名だろう。何よりも物的証拠はこの写真。そっくりに、あのオッドアイ。」
「こりゃ、間違いねーだろ。」
ノブナガが紙をつまみながら団長に手渡す。
団長は軽く目を通した後、苦い表情でその紙を握りつぶした。
「マフィアの家でこれを見つけたといったな?」
冷やかな、怒りを含んだ団長の声が響いた。察しのいい人だから俺がいまから言おうとすることもすでに思考にあるはず。
「もし、もし俺達が標的にしていたマフィアがの一家を殺した集団だとして、この紙にある情報をそいつらが知ったとする。流星街で死んだと思っていたはずの彼女がまだ生きていると分かったら・・・?」
間違いなくやつらは彼女の抹殺に乗り出すだろう。
「シャル、場所は?」
「バーバルシティ、31区27。」
行こう、とクロロの一言で全員が地を蹴った。
先頭にはクロロ、その背後にパクと俺、後ろにはマチとノブナガがついて東方約60キロの町を目指す。
このペースで行けば1時間かからないで到着すると思う。
「ちなみに最終目的地はプラチナカード所持者以外入場を許されないクラブ、裏ではが所属している娼館事業で大もうけしてる。」
「娼館?」
振り返ったクロロのまゆが一瞬ピクリと揺れたのは気のせいではない。
「この報告書、の収入実績みると一晩で3000万くらい稼いでるみたいね。」
走りながら道の植木を破壊したクロロ。
パクノダが彼の不機嫌に追い討ちをかけた。