カルラが起き上がったと医者に呼ばれ、部屋の外で壁に体を預けイルミを横にと医者の会話を聞いた。
「さぁ、どうだろうね。」
細く、弱い声。昔のからもレア・からも聞いたことのないような女の弱さだった。
今にも泣き出しそうなの顔を想像しては苦しさに胸が痛んだ。
大切な女をそこまで追いつめた俺には彼女をもう一度迎える資格などないのだと、決定的な結論は彼女がここに運ばれていた時から出でている。
カルラが目を覚まさない間だけは、少しでも近くにいたかった。
恐れていたのか、俺は。
が目を覚まして、その口から拒絶の言葉を聞くことを。
実際に彼女が今後俺達と関わることを望むなど考えられたもんじゃない。
更に体重を壁に預けて目を閉じる。
俺が、旅団が本当に取り戻したかったものは、今回のことで手に入れられないものへと変わってしまった。
ふと、絶で隣に立っていたイルミのオーラが戻ったかと思うと、次には部屋のドアに手をかけた。
「お前は行かないのか」と聞くようにイルミの表情のない眼が俺を直視する。
いや、やめておく。
頭を一つ横に振るとズボンのポケットから取り出したメモを投げてよこした。
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連絡先か、これを俺にどうしろと?
あくまで声は発せず口だけ動かした。
『要らないなら捨ててよ。』
そう残してイルミは部屋のドアを開け姿を消した。
そのメモをコートに閉まい階段を下りる。
一階にはのためにマチが用意した服や生活用品の数々が詰められた紙袋が散乱している。
そしてフェイとノブナガが持ってきた見舞い品の菓子の詰め合わせ。
もう守られるだけのはいない。
俺達が守れなかった分、これからはイルミがその役を引き受けるだろう。
をイルミに任せたと団員が聞いたら何というだろう。
殴られるのを覚悟してアジトの方向への帰路についた。
家を出て、がいるはずの部屋をもう一度振り返った。
これが最後かもしれない。
未来の選択を他人に任せるなんて蜘蛛のやり方じゃないはずだ。
彼女は、欲しいものは奪ってきた俺達にそうさせないこの世でたった一つの存在。
今こんなにも彼女を愛しいと思い俺を苦しめるのは彼女が信じた神の仕業か。
もし、がもう一度俺達の前に姿を現したら…。
「フッ、そんなことがあるわけないか。」
自嘲気味に笑って彼女のベットがある窓に名残は残したくない。
「愛してる。」
静かに地面に落ちたのは
決して届くことのない最後の告白。
一人で行く港沿い、あぁ、また5年前のようなのいない日々が始まるんだなと耳に光るアイオライトに零せば、
彼女との思い出が一つ、また一つ蘇り高い空に消えていった。