オーロラオーラ奏でよ賛美歌

(Side Yellmi)


ルノーはシズクとかいう女に案内されたアジトの空き部屋でを治療した。 最初の1日は集中治療だとか理由つけて、全員部屋から追い出し朝から晩まで付きっ切りだった。 あれだけオーラが持つのも素直にすごいとおもう。

を隣町にある私の家に移動させるから手伝って。こんなジメジメしたところに置いておけないわ。」
最小限の応急処置をしたルノーの言葉に頷いて場所をアジトからザバン市に移した。




「俺がと知り合ったのは2年近くまえ。」
の治療中しばらくここにいろ、とルノーに言われたのだ。この4日中に死ぬ可能性もあるから最後の顔くらい見れるようにと。 おかげで入ってた仕事も全部兄弟に任せる羽目になった。 その暇つぶしじゃないけど、クロロにの事を聞かれて朝まで話すことになった。

「親父の知り合いの年能力者の弟子がいい腕してるから見てくるって言うからさ、ついて行ったらそれがだった。」
「私たちが知ってるじゃないくらい強くなってたわね、あの子。」
パクノダとかいう女がグラスで氷を遊ばせながら言った。

「本気で殺り合ったら俺でも勝てるかわからないくらい強い。だから敵にせずにたまに一緒に仕事してる。」
系統の愛称も悪いし本当に戦いたくないと思う。 他の人間に対してはこんなこと思ったこともないのに、例えばクロロにも、ヒソカにも。

自分でも変だなぁとは前々から自覚してるんだよね。







「つまりは仕事仲間か。」
らしくもなく堕ちているクロロに軽蔑の目を送った。

「いや、それだけじゃない。」
そして一気にそそがれたこの視線はなんだろう。大方馬鹿な答え期待してるんだろうな。

「・・・言っとくけど男と女の関係とかないから。」
はそこら辺の誘えば着いて来る馬鹿女達とは、そもそも位置づけが違いすぎる。

「1ヶ月に1回、一緒にカフェにいく関係。」

こうゆう関係をなんていうのか俺は知らない。






約束の2日後、ルノーが治療の終わりを告げに来た。 団体で誰かのお見舞いに病室行くかのようにゾロゾロとその部屋を訪れて、治ったの姿に目を丸くしてた。

「残念だけど目を覚ますのが何時になるかは分からない。
傷が私に患者の色々なことを教えてくれるのだけど、は・・・あなた達を前に死ぬことだけを心底願っていた。 精神的な影響で体が老死するまで目を覚まさない事だってまれにあること一応言っとくわね。」



もしがこのまま目を覚まさなかったら

「困るね、カフェに行くってフリーな時間を取れなくなる。」











(Side Charnarc)


案内された部屋にはベットに横たわる。 目は閉じられ、息をしているのかさえ怪しいほど静かに寝ている。
俺達のお姫様をやっと本当の意味で見つけたんだ。
でも、今回のことでは俺達を拒絶するかもしれない。彼女が目を覚ますことを怖いとすら思う。 こんなこと他のメンバーには言えないけどさ。

「あれだけの傷をすごいね。」
マチがの髪を撫でて女医さんに言った。 確かに、の体は完璧といっていいほど元に戻っていた。 ただ腰くらいまであったはずの長い髪が、肩辺りで切りそろえられている変化がある程度だ。

「医者ですもの。」
自己主張を激しく振りまくかのように笑って、定期的に寝ている体に念を送り続ける。 そんな様子を見ながら、団長を一人にしてあげようとメンバーに声をかけた。

今回のこと、レア・のことを探れなかった俺に一番責任があるけど、一番傷ついているのは団長だろうから少しくらい気を遣ってあげないとね。
与えられた部屋に戻る途中、窓から夜空を見上げて昔と瓦礫の上で天体観測したことを思い出した。

これからどうすんだろう。

俺はどうしたいんだろう。

楽しいころの思い出はすぐに現実に掻き消された。













(Side Yellmi)


旅団のメンバーが出て行って20分経ってもクロロはに近寄ろうとしなかった。 俺はそんな様子を何も言わずにドアに寄りかかって横目で時々観察してた。 クロロが何を考えてるのか、そんなことはどうでもいいんだ。 ただ、あの幻影旅団の団長がここまで一人の女に感情を動かされるのがどうしてなのか不思議で仕方なかった。

冷酷、ろくでなし、冷静すぎて馬鹿みたいのあの3Rクロロ・ルシルフルが?

普通の愛ってだけでニンゲンってこんなに弱くなるわけ?





・・・。」
聞こえないかくらいの言葉をやっと口にした。 その声の悲しさにクロロの反対側からオーラをに送っていたルノーがはっ、っと顔を上げた。 俺からはクロロの後姿しか見えなかったけれど、彼女はクロロを見て驚いた顔してた。


まさかクロロ泣いてるとか?
事実か分からなかったけど頭を抱えたくなった。
本当にバカばっかり。



クロロだけじゃない。
バカなのは俺も一緒。
幻影旅団を敵そうとしたなんて、今考えたらありえない話を俺は実行に移した。

それも一人の女のために。

どうかしてる。



すっ、っとクロロがベットの脇にひざまずいての右手を握った。
驚いたよ、だってに触れたクロロの手が微かに震えてたから。
それを自分の額に当てて、何かを祈るかのようにずっと目を閉じてた。

「団長さん、の石返してあげたらどう?」
ルノーが目を細めてクロロを促した。コートの内側から取り出された石には新しいチェーンが通してある。

「それアイオライトでしょう?素敵だわ。こんな状況でも、あなたがこの子を愛した証拠ね。」
レアはコレを生活のために売ったと言っていたからな。持っていなかったことに違和感は抱かなかった。 昨日、の話をしていたときクロロがそう言ってた。

でもそれは実際、誰の手に渡るでもなくずっと主人の元にいた。は手放すなんて微塵も考えたことなかっただろう。

「詳しいんだな。」

ルノーが石に詳しいのはの師匠と知り合いだから。

「それを今後も身につけるのか否かはが目を覚ましてから自分で決めることよ。だから、おねがい返してあげて。」
ルノーのクロロを見る目はまっすぐだ。その視線に折れたかのようにクロロの腕がの後頭部をゆっくり包んで石を主人の胸元に戻す。

月明かりを浴びた石が、本来の輝きを見せた。

それは暗い部屋には明るすぎるほどに。