「ちょっとここじゃやりにくいわね!個室はないのこ・し・つ!!」
ルノーという女が真っ赤な体を抱え上げ、シズクを案内に奥へと消えていった。
「あの女さー。」
イルミが人差し指を向ける先には昨日まで愛していた「」がいる。
「に殺してくれって頼まれてるんだよね。」
いいよね?と念を押して足を進めるイルミに怒りという感情が見え隠れしている。
それは「」だけじゃない、俺達に向けられたものだ。
あの非情でものごとに関心を抱かないと思っていた男が、一人の女のためにここまでする理由は?
本物だというとイルミはおそらく個人で交流があるのだろう、その人物をここまでスタボロにされればこいつなら依頼無しでも一人くらい殺るはずだ。
「パクノダ、あっちのも一応調べてくれ。」
おそらく結果はこの2年を否定するものだが。
「あのクラブへ迎えに行ったとき俺達の名前を知っていたのが気になる。」
「はい。」
血で真っ赤な手をそのままにパクノダが「近寄らないで!」と叫んでいるレアと呼ばれるオッドアイに手を伸ばした。
パクノダはほんの一瞬だけ触れ、そして弾かれたかのように女の体を飛ばし、すぐに足先をこちらに戻してくる。
パクノダがある程度の位置まで来たときイルミがレアの体に鋲を数十本打ち込んだ。
ザクッ、ザクッっと鈍い音を立て鋲は肉を貫通し、死体に無数の穴を作った。
無残な体とは裏腹に、見開かれたオッドアイだけは生前よりも輝きを増しているように見える。
「もっとはやく調べるべきでした。」
パクノダが申し訳なさそうにうつむいた。
という顔を持つ人物がこの世に1人だけだと考えていたのが間違いだった。
やっとみつけた宝を疑ってかかるほど旅団員は非情ではなかったということか。
「レア・。の双子の妹で・・・昔からのことを疎ましく思っていたようです。
両親が殺害され、も両親同様に死んだと思ったレアがの名前を使っていた。
初対面で私達の名前を知っていたのは、団長あなたが2年前クラブで彼女を抱きしめたときに記憶を読まれたから。
私と同じ様な能力を持つ特質系。その後も旅団員に触れることで記憶を引き出しを装っていた。」
唇をかみながらパクノダの眉間に皺がよる。
「私の記憶が正しければ、私達の知るは具現化系です。」
今度こそ頭を抱えずにはいられなかった。
レアが本当の「」であると仮定しても、あいつの念能力レベルで系統のチェンジは不可能だ。
レアの特質系は生まれながらのものと考えるのが正しい。
現に、と思っていたレアと過ごしたこの2年、彼女は一度たりとも俺達の前で念をみせたことがない。
それは言わば守られている者の特権。
パクの話を聞いたマチとシャルはシズクたちが消えた奥の間へ向かって走り出した。
パクノダはまた地面に座り込み泣き始め、フェイタンはきっと昨日の拷問の時のを思い出しているのだろう、立ったまま瞳さえ動かさない。
フランクリンはレアの死体を見つめている。
ノブナガは座り涙を流して、ウボーとフィンクスは俺を射るような視線を送ってくる。
あの石に口付けをして、の流した血溜まりの中に膝をついた。
天井を見上げれば日の光が差し込むその温かさの中で
の信じる神に懺悔せずにいられなかった。