「う・・・そでしょ。」
目を開けてあったのは憧れた天国でもなければ、地獄でもない。
地獄よりも辛い場所だった。
なんで・・・。
何で私死んでないの?
途中で消えた光は私を殺してくれるレアの発が消えたということ。
そして後方から放たれた強い念、はそれを邪魔した何かである、と冷静になった頭が考え始める。
そして血に濡れたマンダリンガーネットが捕らえたのは地面に突き刺さる見覚えのある鋲とトランプ。
今度こそ私を殺した、と思ったレアは震えながら後ずさりをしている。
この鋲とトランプを投げた人物に対する恐怖心か、もしくはこれからバラされる事実にか。
「何だてめーら!」
旅団員の声がこだまするのが聞こえる。全員が戦闘モードに切り替わっていた。
カツカツ。一度止まったパクノダのハイヒールの音がまた聞こえはじめた。
この鋲・・・イルミがレアの発を止めたということは、彼はどうあっても私を死なせる気はないらしい。<
私と旅団を会わせたのはイルミが計画してやったことなんだろう、となんとなく分かっていた。<
理由は知らないけど、私さえ知らなかった妹の存在を彼が知っていたらきっと疑問に思ったはずだ。
なんで、こんなに顔の似ている人間がまさかクロロの隣にいるのかって。
だから無理に会わせたんだ。幻影旅団関係の仕事を私がしないのを知っていたから余計不思議に思ったのかな。
たとえ殺されそうになっても私の実力なら一人でも逃げてこれるって普通に考えていたのだろう・・。
どんなに勘がよくても、イルは私と旅団がどんな幼少期を過ごしたのがなんて分からない。
私が旅団に抱いている感情が温かいものであると彼はしらない。
まさか死ぬかもしれない攻撃をされておいてやり返さないほど馬鹿じゃないと思われてる。
だけどそのイルミの考えに反して私はレアと自分に関する事実を告白しなかった。
攻撃も仕掛けなければ逃げもしなかった。
言ったところでそれが何になるのだろう。
これは主が与えた罰でしょ。
受けるべきものであり、許しを請うもうのじゃない。
友達は殺さない。
マチに念を教わり始めたときの誓いはまだ胸にある。
みんなに攻撃なんて・・・私にはできない。
「おやおや、ずいぶん痛めつけられたみたいだね。めずらしい。」
何とか瞳だけを私のマンダリンガーネットに向けひょうひょうと言うピエロを思い切り睨みつけた。
旅団員は傷つけるな、と牽制をこめて。この男じゃ1人2人本当に殺りかねない。
「この子さ、僕が狙ってたんだよねぇ。だから他人に殺されるのはとても腹が立つんだ☆」
トランプを口元に禍々しいオーラを放ち始める、その矛先は旅団員に向けられている。
「パク。」
命令を下したクロロが本人がパクノダの足を止めさせた。
彼もまた、オーラを増幅させヒソカとイルミを警戒している。
今この2人がパクノダに手を出せば負けるのは確実にパクノダのほうだと分かっているのだろう。
「安心しなよ、その女は殺さない。」
珍しくイルミの口調に感情が含まれていた気がする。少しイライラしてるようなそんな感じ。
その言葉を聞いたパクノダがクロロにアイコンタクトを取った。
彼の黒い髪が一度上下に揺れたのを見てまたハイヒールが響きだす。
「クロロ!早くあの女殺してよ!」
レアがまた騒ぎ出した。うるさい・・・。
「ルノー!」
イルミの手が私の頬を包んで、知り合いの名前を呼んだ。感覚はないけどたぶん今日も冷たい手をしてるんだろうな。
感覚もなくせに守られているかのように感じたのはきっとイルミの包容力。
ヒソカは相変わらずオーラ全快で旅団を威嚇している。
「本当にまぁ、すごいやられようね。」
ヒソカの後ろから出てきた金髪カールロングで化粧が凄いこの女性は魔女と呼ばれる腕を持つ医者だ。
「完璧に戻すのは難しいかもよ?」
ありったけの笑みで私のマンダリンガーネットに微笑みかけた。
カツっ。
パクの靴が私のわき腹あたりで止まった。そして腰を下ろし私のこめかみ辺りに手を置いた。
ああ、もうだめだな・・・。
イルミ、私あなたに助けてなんて依頼してないよ。しかもルノーまで連れてくるなんて。
そう思ったら潰されたブルーレースとマンダリンガーネット両方から涙が溢れた。
まさかこんな血塗られた再会になるなんて、流星街を出て行ったときには想像すらしなかった。
みんなに会いたいと思っても行動に移したことなんてなかった。
なぜそうできなかったのか、自分が痛いくらい分かっている。
あわせる顔がないのよ。
5年前の友達に。