昔からフェイタンは虫の解剖やら、折檻に夢中だった。
当時はわたしも彼と一緒に実験をいっぱいしたんだっけ、まさかその虫に自分がなる日が来るなんて想像すらしなかったけれど。
「いいかげん吐くね。おまえなぜと同じ顔持っている!?念なら早く解除するね!」
繰り返される暴言と拷問に流れる血が止まらない。
オーラを固めているからこそ流血も抑えられているがこれでは死ぬのも時間の問題だ。
「・・・もう殺しなさい。」
もう立ち上がることもできない。足や腕はところどころすでに骨が見えるまで肉がはがされ、四肢は折られて非人間的に曲がっている。
臓器もいくつかやられて肺は片方しか機能していないみたい、息が続かない。
「またそれね!おまえ明日調べられる、そしたら殺してやるね!それまでここで寝てるといいね!」
手にしていた鋸の歯を乱暴に地面においてフェイタンは出て行った。
やっと訪れた静寂。
ここはフェイタン用の拷問部屋の一つだろう。
入った週間にした死体と乾いた血の匂い、そして様々な拷問用具が調えられた棚の列。
今背中を預けている壁は飛び散る血にドス黒く染められている。
彼らにとっては私が「」の顔を持っていることがまず気に食わないのだ。
そしてそれに加えてレアのあの言葉、「」を他人の私が利用していい生活をしているということも。
私がイルミの知り合いだと知りながらこんな目にあわせるくらいだから、ソルディックとの関係を悪化させようとも許せない人間イコール私の感覚なんだろう。
「愛されてるねは・・・。」
これが自分の運命。幻影旅団を愛し、幻影旅団に殺される。
主が彼らを裏切った私に与えた罰だ。言い訳はしない『私が本当のだよ』なんて言う気になれない。
パクノダが明日来ると言っていた。
パクの念能力があの頃と変わっていないなら、私は明日彼女に触れられ調べられる。
そうすれば確実に私が本物だとばれてしまう。
それが分かったときクロロは、フェイタンは、皆は悲しむのだろうか・・・。
私の記憶のみんなは笑っていて、優しくて。そんな皆に悲しんでなんてほしくない、ましてやその原因が私だなんて真っ平ごめんだ。
調べれらるまえに死ぬことが最善策。
でもその前に、あの女を殺さなきゃ。
レアはいつか皆を裏切るから。自分の利益のために今度は優しいみんなを、その愛されている立場を利用して。
そんなこと私が絶対にさせない!本当なら10年前に私もレアも両親と一緒に死ぬはずだった。
悪あがきはやめてこんどこそ一緒に逝きましょう。
温存してあった最期の力を振り絞ってイルミに念を届けるべくそれを発動させた。
『マジカルレター』
契約者と届け先の能力者しか目にすることのできない物体を具現化しメッセージを届ける能力、念使用量「極低」。
光の中から可愛い鳴き声が聞こえる。
「こんにちわ、カナシャ。」
具現化した伝書鳩カナシャは主人がこんな姿になってもこれが契約者だと認識しているらしい。
くちばしを優しく折れた鼻に摺り寄せてくる。
チュチュン。
「こんな姿でごめんなさいね。ゴホっ・・・届け先はイルミ・ゾルディック、依頼:クロロ・ルシルフルの恋人もとい、レア・の殺害とパクノダの操作。
旅団から「・」の記憶を消させること。報酬は・の全財産。カナシャ、必ず届けて・・・。」
レアを殺して彼らの「」という存在を消し、彼らから流星街のの記憶を消して私という人間をなかったことにすれば、たとえ「」のレアを殺しても団員は悲しまくて済む。
ピューピっ、と鳴いて壁をすり抜けていく伝書鳩を見送ったあと今度は私の体にまとう念を解除させた。
もう念で体を固めるのはやめよう、願わくば明日早朝に死んでいることを願って。
神様。
死なせて下さい。
もう、クロロのことを考えなくて済むように。
僅かに動く左腕を血溜りにつけて這い蹲り地面に大きく十字架をきった。
皆を置いて出て行った私に主が下した罰は、想像以上に重かった。