幸村精市の噂









幸村精市の噂











「もーやってらんない!一回浮気したくらいで別れるなんて言わなくたっていいじゃん!ねぇ柳、赤也そう思わない!?」
「そうすうよね!冨美先輩が正しいっすよ!ねぇ、柳先輩!?」

こちらに顔を向ける赤也は『頼むから話を拗らすな。』と訴えている。確かに、否定でもしたら暴力を振るわれそうなので首だけ縦に振っておいた。話を聞く限り100%悪いのはこの女のほうだが、付き合いのある人間だけあって敵に回すと厄介だ。何といっても我がテニス部のマネージャー。キレられて仕事を放棄などされては叱責は俺と赤也も降りかかる。

「やっぱりあんた達はあいつと違って話が分かる!!」
「あいつとは?」
「幸村!前に相談したらキレられたの!」

相談じゃなくて愚痴だろ、そう内心呟いた。


「『冨美は女らしさがないよ。』から始まって、その性格直せとか理想の彼女像を力説するんだよ。しかも自分の彼女と比べて私の悪いとこばっかり指摘してさ!もう二度とあいつには相談しない!」
「精市は俺たちより女心が分かると思うが。」
「あいつの彼女、吹奏楽部のさんだっけ?確かに可愛い子だよね。あの幸村が5回告白してようやくOKもらえたって噂あったよね。あれ本当なの?」
「ああ。正確には7回目の告白でな。」
しつこいよね?!私だったら張り倒してる!それに何だっけ、合宿明けの登校日に彼女の教室で思いっきりキスしたとか!?2人のキス見て興奮して倒れた子いたらしいじゃん。」
「それ、俺も聞いたことありますよ。幸村部長が『学校ではダメでしょ、って怒られちゃった。』って部室で蹲ってました。」

「幸村はあれだね、完全彼女依存性。つける薬ないよ。この前部室の掃除してたらさ、幸村の隣のロッカー空いてるじゃん?だからそこをあんたらのエロ本入れにしようと思ったの。あけたら何があったと思う?」
「何すか?代えのジャージとか?」
「・・・俺はずいぶん前から知っていた。」
写真展示場!!!さんの写真がロッカーの中一面に張ってあんのよ!あいつあの空間を部活中の目の保養にしてんでしょ。」
「ええ!?」


「そうだ!!一番むかついたのがね!!あいつ、ここぞとばかりにさんとのキスの自慢してきてさ!『の唇は柔らかくて可愛いんだ、でもお前のはダメだね。見た目からしてガザガザだし。キスする気も失せる。』って言ったんだよ!!しかも他の客がいるファミレスのど真ん中で!人の目考えろって私より非常識だと思わない?!」

「「・・・確かに。」」









「まぁ結局のところ私にあんな子になれって、難しいでしょ。」
「難しいではなくて、無理だな。」
「ちょ、ちょっと柳先輩ッ!」


「私の話を聞かなかった幸村に復讐してやろうと今日、一人遅くまで部室に残ったのにはわけがある。」
「・・・。」
「・・・まさか冨美、おまえ。」

「ほーっほっほっほっほ!!全部ひっぺはがしてきました彼女の写真!!代わりに私の写真を大量に残してきたわ!明日幸村があのロッカー開けてどんな反応見せるか想像するだけで笑えるんだけど!!!!ってやばい!8時から彼氏3号と会う約束してるんだ!じゃ、2人とも明日ね!」


「・・・俺、明日休んでいいっすか?」
「さぼりなら、俺も付き合おう。」







翌日、地引冨美がテニス部部長に羽交い絞めにされた挙句、コートフェンスに吊るされ見せしめにされたことは歴史に残っていない。
真田が部誌に記入しなかったからである。




















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