Princes VS Princess
「・・・なんでしょうか皆様お揃いで。」
いつも通りの休み時間、ある集団の登場に教室内が一気に湧きあがった。沸騰しそうなほどに。机に突っ伏して10分の眠りにつこうとしていた私。「きゃー。」とか「うわー、かっこいい。」とか黄色い声を上げ始めたクラスメイトの声に一度下げた頭をはっと上げ、何が起きているのかと辺りを見回した。
睡眠妨害の原因はテニス部のレギュラー陣だった。
眠気にぼんやりしていた頭が一瞬にして活動をし始める。アドレナリンが大放出された。
「げっ!」
ガタンっ!椅子を後ろに思いっきり突き飛ばして立ち上がる。目指すのは教室の扉だ。こいつら何でここにいる!?逃げだそうと背を向けると、同時に手首を掴まれた。恐る恐る振り返った先には我らが部長様。
「逃がさないよ。」
私の慌てた様子に御満悦な笑みを浮かべる彼が握る私の右手は悲鳴を上げている。その横で私の天敵3人が同じように笑いかけていた。
赤也、丸井それに仁王!あんたら怖いわ!!
後ずさり。私がさがる距離を同じく詰め寄る前列4人。一体何しに来た!!あんたらの顔見るのなんて部活中で充分だっての!
「警戒すんな。」
部長様の隣に立つ丸井がこれでもかというほど微笑む。
警戒するな? 無理!
その顔が「これから良くないことが起こるぞ。」って言ってる!
トンっ。終に壁に追い込まれて私の逃げ道はもうない。半円を描くようにか弱いマネージャーを囲む連中の笑みは止まない。
イジメだ!これはイジメ!!
こいつらまた私で遊びに来たんだ!
テニス部のマネージャーを始めて早2年。テニス部員の一日は6時の朝練から始り、放課後は他のどこの部活よりも長く残る。私の朝はこいつらの朝6時より早く始まって、片付けと部室の掃除でこいつらより長い。マネージャーとして精一杯やっているのにテニス部員、特に今前列に立つ連中は私に労いの言葉すらありはしない。いいのだ、例を言われるためにやっているわけではないから。
だけど許せないことが一つある。それはこいつらが私をからかって遊ぶこと!!
例を挙げろといわれれば今までの怒りの思い出が一気に百は浮かんでくる。
其の一。
夏の過酷な練習、暑い暑いといいながらボール拾いをしていたら丸井にバケツいっぱいの水をぶっ掛けられた。
『涼しくなったか?なっただろい。俺に感謝しやがれ。』
代えのジャージがなくて水をたらしながら仕事をすることになった。仕返しに素振り中ぶっかけ返してやったら幸村に『2人ともグラウンド100周。』と言われたった10周でグラウンドに倒れこんだ。
其のニ。
仁王はマッサージが上手いと柳が言っていたので肩の凝りを治したい相談をした。
『いいぜよ。放課後にマッサージしちゃる。』
放課後、肩を叩いてくれるのかと思いきや手を引かれ部活後街中へ。
『ここじゃ。ここなら人目も気にならんじゃろう。』
仁王が指差す先には点滅するラブホテルの看板。もちろんダッシュで逃げた。追ってこないかと振り返れば仁王、そのもっと後ろのほうで赤也、丸井そして幸村が腹を抱えて大笑いしていた。
こんなことが日常茶飯事。最近私は復讐を計画している。馬鹿にされたままでいられる程お淑やかではないのだ。だけど、やっぱり怖い!!!!
「柳・・・。真田・・・。柳生・・・。ジャッカルゥゥゥ。助けてー!」
後列4人は私の叫びにすまん、と顔を下げる。この薄情者達め!
「。」
「・・・なんでしょうかユキムラ部長。」
「!」
「つば飛ばすな、馬鹿井!」
「プリッ。」
「日本語で話して。」
「先輩!」
「だから何の用!?」
「「「「っおめでとー!!!!!」」」」
「ぎゃーーーーー!!!!!!」
男4人に一気に飛びつかれ、真ん中で片手を上げて叫び声をあげた。ギューッと四方から体中に圧力がかけられ私はそのまま床に崩れて行く。視線が低くなって周りの人間の顔が見えた。顔を青くして私を見ているクラスメイトと、あきれ返っている後列レギュラーがいた。
「17歳、ハッピーバースデー先輩!!」
「おめでとさん。」
「おめでとう。」
「おめでと!」
4つの手が私の頭をグシャグシャに撫でる。あっちにこっちに頭を引かれ眩暈がする。
「これ、俺らからのプレゼントッす!」
赤也がジャーン、と取り出したのは綺麗にラッピングされた大き目の箱。
予想していなかった誕生日プレゼントに放心状態に陥った。
「いつも尽くしてくれているマネージャーにささやかだが俺たちからの気持ちだ。」
後ろに立っていた柳が言葉を発しない私にフォローをくれる。
「・・・みんな私の誕生日知ってたの?」
「お前さん、気ぃ遣わせたくなくてだまっとったんじゃろ?去年は幸村と柳にも騙されたわい。」
「が言うなって言うからね。彼女の気遣いくらい聞いてあげないたいじゃないか。」
「俺はお前たちが聞かないから黙っていただけだ。無駄なデータは流さないよう心がけている。」
「去年はまんまと何も無いように過ごされて、おめでとうの一言も言えませんでしたからね。」
柳生が言う。それはアンフェアだと。
「そうだな。俺たちの誕生日にはケーキを焼いてきてくれるのに俺らがの誕生日を祝わえないのはアンフェアだ。」
ジャッカルが手を伸ばして私を立たせてくれた。
「あ、ありがとうみんな。」
ジーンと目に熱が篭る。もらったプレゼントもじっと見て「開けていい?」と聞けば「もちろん!」と元気のいい返事が返ってきた。
「じゃ、3秒カウントいきまーす!!」
「さん!」
何だろう。みんなからのプレゼントなんて始めてだ。
「に!」
お菓子かな!?新しいジャージかな!?
「いち!!」
もう何でも嬉しい!!!
「何かな・・・ーーーって、ぐえェェェッッ!!!!!」
衝撃。
箱を開けた瞬間に顔に何かが突進してきた。それは顔面にクリティカルヒットして現在ビヨーン、ビヨーンと箱から姿を見せ踊り揺れている。あれは人間の拳の模型だ。これは所謂ビックリ箱というヤツ。
「「「「あーはっはっはっはっはっは!!!!!!!!顔真っ赤!!」」」」
大爆笑を始めた例の4人、そして一部始終を見ていたクラスメイト。
柳生、ジャッカル、柳、真田は顔をそれ以上ないという程真っ青にしていた。
「みなさん、これがプレゼントだとご存知でしたか・・・?」
「・・・知っていたら止めていた。誰だプレゼント係りに仁王と赤也を選んだの。」
「弦一郎だ。俺ではない。」
「・・・すまない。」
「あーんーたーらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一目散に逃げ帰った赤也、丸井そして仁王に「放課後覚えてろよ!!」と職員室まで聞こえそうな怒鳴り声を上げる。未だに床の上で揺れるビックリ箱を思い切り蹴り上げた。
「。」
「幸村あんたね!!!あんたそれでも私の彼氏なわけ!?」
ニコニコと笑う部長様の胸倉を掴む。乱れに乱れた私の髪を彼は相変わらず笑ったまま直しにかかった。
「ごめんごめん。これが俺からの本当のプレゼント。」
はい、と差し出された中くらいの大きさの箱。これもまた綺麗にラッピングされていた。
受け取るか、受け取らないべきか。
これもイタズラの可能性は高い。
ギロリ、後ろにいる4人に「お前らこれが何か知ってるか?」とテレパシーすれば全員が首をブンブンと横に振った。
「気に入ってくれると嬉しいな。」
チュッ。
不意打ちの右頬へのキス。同時に中くらいの箱が押し付けられる。唇が離れると「みんな、教室に戻ろう授業が始まってしまう。」そう颯爽と他のメンバーを連れクラスを出て行った。
「ちゃん、開けてみなよ。」
幸村達が姿を消したところでクラスの友達が「きっと素敵なプレゼントだよ」と笑いかける。
「・・・そう、だよね。」
彼氏を疑ってどうする、自分。
押し付けられたプレセントの真っ白なリボンに手をかける。リボンが解かれる間、私は大好きな幸村の、そして「天敵の部長」両方の笑顔を思い出していた。
「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!」
精市に促され出て行ったの教室。23、31秒後に後方から彼女の絶叫が聞こえ、精市以外の全員がそちらを振り返った。叫び声の原因であろう当人は俺たちと同じように立ち止まり、背を曲げて声を殺しながら大笑いしている。
「・・・幸村、お前に何をプレゼントしたんだ?」
「あーもう、お腹痛い。んー。プレゼントね、これだよ。」
制服のポケットから取り出された一枚の紙は雑誌の1ページのようだ。そこには女物の下着の売れ筋ランキングが載っていた。
「「「「・・・。」」」」
「まさかと思うがこのランキング3位の下着じゃ・・・。」
「それの他にどれがあるのさ。」
(幸村、お前結構大胆なやつだったんだな。)
(精市の趣味を知る良いデータになった。)
(破廉恥な。)
(アデュー・・・。)
(俺のプレゼント気に入ってくれた?) (この変態!!) (好きな子につけてもらいたいなーって男心だよ。) (だからって何であんなレースの透け透けの下着!!…自分で買いに店行ったの?) (まさか。1年マネに頼んだんだ。) (((ごめん、希恵ちゃん・・・。))) (今度のデートにつけて来てね。) (・・・!?) (、Happy Birthday!)
幸村さんの誕生日夢を製作中にヒロインの誕生日夢が書きたくなった結果。 キャラが壊れてすみません。
[01.04.2012]