a cup of tea a cup of tea 「それは私が聞きたいな。」って苦笑して見せるけれど、

実は答えを求めているわけじゃない。

そう、きっと聞かないほうが幸せなことだってある。





























ねぇ、龍崎さんは好きな人とかいないの?



お嬢様学校に通う私は、家庭の環境からかあまり男の子と関わらない生活を小さいころから送っていた

。 それは多分、同じクラスの女の子たちも同じだと思っていたから、高校の修学旅行、ローマに滞在中のホテルで恋愛の話が

一段と盛り上がったことに驚いた。抜け出す機会をまんまと逃した私は、同級生が語る赤裸々なエピソードに耳を傾けてた。



そのうちに話す順番が自分に回ってくるのは当たり前のことで、そういえば聞いたことないよね!

って興味深々な同級生の視線を一身に受け止めながら、日本から持ってきたジャスミン茶に手を延ばした。


「もう4年になるかな、私の片思い。」

中学2年生。子供だった私は自分の感情を当たり前のように他人にぶつけては自分の定めを恨んだ。

いつしかあの国を救いたいって心から思うようになったのは親友二人のおかげ。



悲しい戦いの後、一番に頭に浮かんだのは彼のことだった。

何でだろうなんてその時は分からなくて、ただ今あの人はどんな思いでいるのだろうって思ったら胸がすっごく痛くって。

2度目のセフィーロで彼と対面したときに「恋」って感情に気がついた。



「すごく大人な人で、やさしい人。」



700年以上も生きてるのよなんてみんなには言えない。

彼が生きてきた1秒1秒を全部理解するのは無理な話、それには700年はあまりにも長すぎる。

精獣の森に行けば喜ぶ精獣たちと、本当に心からの笑顔っていうのを見せるクレフ。

初めて連れて行ってくれたとき、その笑顔にノックアウトされてから精獣がライバルに加わった。





「誰にも平等で、たくさんの人から慕われてる。」

導師としてどんなときも人々には笑顔をみせるクレフが導師となったのは500年ほど前だそうだ。

セフィーロ歴代の導師の中でも最長らしく、あの国で彼のことを知らない人はおそらくいないだろう。

弟子入り希望にくる若者の数は絶えなくて、クレフから直々に指導を任されたラファーガとランティスは彼に劣らず忙しそう。

ランティスとザカートを育てていたときが導師として一番幸せだった、と話をしてくれたことがる。





「忙しい人だからあまり会えなくて。」

フェリオや部下の人たちは厳しい!ってよく泣き言を言っているけど、同じくらい自分にも厳しい人だというのは周知の事実。

事実、セフィーロに遊びに行っても会えないことなんて良くあるし、それどころか私が来ていると知っているのかさえ不確かな程。

以前は、挨拶にだけ顔を出しに行っていたけど、逆に気を使わせてしまうらしいことが判明してからは訪ねもしなくなった。

私が来てるってこと彼には言わないで!ってプレセアたちにお願いしたのに、知っているのよ、あの人。なんでかしら。

夜、ノックされた扉を明けてみればそれは親友たちではなくて以外にもクレフだった、なんてそんなこともある。





「お休みがあると一緒にでかけたり。その程度。」

特別に何かするわけではなくて、ちょっとお散歩に出かけたり、城下町へ軽い食事に行ったり。

一緒に歩いてると良く思うの、すっごくきれいに歩く人だな、って。

それにここ、ローマと同じように女性のエスコートの仕方を知ってるっていうか、すこしお姫様になった気分に浸れるの。





「でも辛いことがあると、仕事中でも時間をとってくれたり。」

一回だけ泣きついたことがある。人生の中で誰かに泣きついたのはあれ一度きり。

まだ顔出しの挨拶に行っていたころ、あれはそもそも地球であった嫌なことを引きずってセフィーロへ来たことが間違いだった。

クレフの書斎の扉を開けて「おじゃましてるわ。」っていつものように普通に挨拶をして、部屋に戻った。

少し泣いてたら、やさしく扉を開ける音がして、



「抱きしめて慰めてくれることもあるの。本当にやさしい人。」

クレフは何も言わなかった。気づけは彼の両腕に包まれていて、それがすっごく温かくて私は眠りに落ちてしまった。

そして、クレフが頬にひとつキスをくれた、そんな夢をみた。











なるべく短い言葉でまとめてみたけれど、きっとみんなに本当の彼のイメージは伝わってない。





二人ってどんな関係なの?

聞いた限りでは恋人同士に聞こえると思うけど、私たちは恋人同士ではない。

本当の恋人たちの言葉や、行為があったわけじゃない。

ひとつ言えるのは、私とクレフの関係はプレセアとクレフの関係とは別物。

さびしいときには気持ちを寄せ合うけれど、発展っていう言葉が私たちの関係には欠けている。



「それは私が聞きたいな。」

このままでいい。告白して、傷つけたくないし、傷つきたくない。

臆病なこの気持ちにどうか、だれも気づかないで。















私、その彼はぜったい龍崎さん一筋だとおもうよ。

ジャスミン茶を盛大に噴出してしまった私に







その恋、実るといいね

って笑う友達の笑顔がすごくまぶしかった。




















一応アップ。