サバイバルケーキ 今日は異世界の少女、ウミの誕生日。彼女と風、光の到着を控えセフィーロ城家事場では着々と準備が進んでいた。

やわらかいパンのスポンジに花の蜜で作ったクリームを乗せるワンパターンな作業を行っているのは城の料理人3人。

大して美味しくもないそんなケーキを800台用意してくれ、と王子フェリオ要望が入ったのは1週間前。

元々アクティビティが大好きな海、毎年ティータイムの後にはみんなでバレーボールと言う地球の球技や鞠つきなどをして遊ぶのが恒例。



そう、今年のテーマは『ケーキ投げ』!!!









ケーキ投げとは、自分以外の人間の顔面向けてケーキを投げる何とも簡単な遊びである。

目標の800台がなくなるまで投げて投げて投げまくる!発案したのは今回誕生日の本人。

乗り気だったフェリオ、光、カルディナ、プレセア、アスコットはもちろんすぐに賛成同意。

参加を渋っていたメンバー、特に導師クレフも誕生日当事者が言い出した内容だけ合って拒否もできず迎えた今日、3月3日。

ケーキのクリームで汚れるのは目に見えて分かること、異世界の少女達3人は学校のジャージを、セフィーロ陣もまるで見たことのないスウェットのような軽装で集まった会議室A。



それぞれが自分のポジションに着く。

料理長の「よーい!」という掛け声でいっせいに腰を屈める参加メンバー。

そして次の「どんっ!」で皆が一斉に部屋中心に置かれたケーキに向かって走り出した。

出だしが遅れた導師クレフ、脇にいるアスコット氏の裾を掴み行かせるかッ!歯を食いしばっております。

海ちゃん、光ちゃん、風ちゃん、流石足が速いですね!すでにケーキの山に到着し両手に紙皿、反対側から喧嘩するように走ってきたアスコット氏とクレフ氏の顔面めがけて大ヒット!

「ブッ!!」

「グェ!」

クレフ氏の顔面に的中したのを確認した海ちゃん、次のターゲットは風ちゃんだ。

ランティス氏にケーキを投げようとしていた風ちゃんに横からケーキを投げつけた!



「きゃぁ!!」

よっしゃッ!次の2枚の皿を手に取ろうとした瞬間後ろからあった衝撃に恐る恐る後頭部に手を当ててみた。

そこにはクリームの塊。

「ちょっと誰よ!!」

振り返った先にはざまあみろとケラケラ笑うフェリオの姿。

「風にやってくれた仕返しだ!」

「やったわねフェリオ!!ケーキの龍――――!!!」

出たー!海ちゃんの必殺技水の龍ならぬケーキの龍!4枚の皿を1秒間隔でフェリオに向けて投げ飛ばす。

「なるほど…。」

海のケーキの龍を見ていたランティス、何を思ったのか皿とケーキを両腕で抱えるだけ抱え、それを導師クレフの頭上に立ちはだかった。

「ラ、ランティス。何をするつもりー。」

「ケーキ招来!!!」

ドシャ。

稲妻招来ならぬケーキ招来を食らったクレフ氏、弟子ランティスが落としたケーキの山に埋もれ早くも脱落。

「フウ、行くで!!!!」

突如聞こえてきたカルディナの雄たけびに、風は空かさず反応する!!

「そう易易とやられるわけには参りません!」

目に飛び込んでくる4枚の皿。全て同時に飛んでくる。風の顔面到達まであと2秒!

「護りの風!」

護りの風発動です!風が巻き起こり、風氏を匿い、飛んできたケーキは何と風に跳ね返されて投げた本人の元へ飛び返る。

「ゲッ!跳ね返ってきおった!ならウチはコレや!!!」

隣でラファーガにケーキを投げていたプレセアの手を取って自分の前にムリヤリ立たせセーフ。

「護りのプレセア!!!」

ドシャドシャドシャドシャ。

「ブッ・・・。」

「悪いなぁプレセア!ありがとさん!」

「カ、カ、カルディナァァァ怒!!!!!」




「ラファーガ加勢してくれないかしら!」

前方から聞こえてきた海の声、どうやらフェリオ、ランティスそして光を相手に1人で戦っているようだ。

「ああ、今行こう!」

とりあえず海と戦っている3人の後頭部にケーキを1台ずつ投げ、加勢に回る。左側には海とラファーガ、右側にはフェリオら3人、そしてそれに挟まれるように未だケーキに埋もれているクレフ。

投げられ相手に届かなかったケーキが行く先は哀れなクレフ氏の元。

「頼むからコントロールしてくれ・・・ブッ!ウミ!!!」

「わわ、ごめんなさいクレフ!でもそんな所にいるのがわるいのよ!」

フェリオはラファーガにケーキを投げながら思った。コレはいいチャンスではないだろうか。

普段怒られている鬱憤を晴らすまたとないチャンス!!

よっしゃァ、とこぶしを握ったフェリオは数少なくなったケーキの山からケーキを持てるだけ持ち全てをクレフ氏に投げつけた。

「べッ!!王子何のつもりですか!」

復讐完了!清清しすぎる気持ちにケーキ投げの素晴らしさを味わった瞬間であった。

















「あはは、みんなベトベトね!」

無くなったケーキの山、残るのはクリームで真っ白になった参加者と汚れた部屋。

「では、お片づけしましょう。」

それから2時間、ケーキの残骸と部屋の汚れを落としたセフィーロ陣はこんな遊びがある地球という星の想像を膨らませるのだった。





楽しかったな。

それが一同の感想。



今日誕生日の海にとっていい思い出になったならいいな、と皆が心で呟いた。



答えはイエス。

布団で寝返りを打ちながらケーキ投げ大会を振り返った海にまた笑いが起きた。

みんな、どうもありがとう。

今夜はいい夢が見られそうだ。