ビリーブイン
こんなに空が高い日は、窓際に置かれた同僚の仕事机に頬杖をついて、上司に見つからない程度に空を見上げてみる。ほんとうに短い間だけ。
学業も、仕事も全てがうまくいって今の生活に文句なんて全然ない。
たくさんの、いろんなタイプの人と知り合った大学生活、働くことを学んだアルバイト、そして社会人になってもっとたくさんの人と知り合って、自分の会社に尽くすことを学んだ。
第一志望の会社に入ることができたし、私は今お金のために働いているのかと聞かれれば50%はNoで答えることができるだろう。
働いているとき、私は神経をかなり集中させているからワザとでなくても他のことが頭の中にあることは少ない。
でもこうやって空を見上げてる一瞬だけはいつもセフィーロを思っている。
「あのあとどんな国になったのかしら。」
気になって気になって、どうしてももう一度行きたくて何度も東京タワーに足を運んだけれど、神様は願いを叶えてくれなかった。
強い思いも諦めに変わって、いつかセフィーロがオートザムみたいに科学の国になったらみんな会いに来てくれるかな、なんてどうしよもないことを風や光に言ったものだ。
仕事帰り、ネオンが輝く都心を後にして今は一人暮らしをしている自宅へと歩く道には、街灯がポツポツとある程度。
その小道を歩いているとき闇に影響されてか少し暗い気持ちになる。それはどんなに仕事がうまくいっていても、幸せなことがあっても毎回のこと。
過去に忘れてきた。
何を?と聞き返しても返事はない。
ただ、過去に忘れてきた。と心が泣いてる。
笑顔でさよならできたのはあの人の笑顔を思っていたから。頭は心の気持ちを理解できない。
「なんでもない。」
あれ以来、この言葉をあまり生活で使わなくなった。
きっと、いつも正直でありたいと心が願っているから。
この道を帰るとき、夜外へ出かけるとき、きっとこれからもずっと心が泣き始めるだろう。
どうやったら慰められるのか、私にはまだ分からない。仕事中の自分とはまったく違う自分の存在に、多重人格なんじゃないかって疑われても仕方ないほど、私の心が堕ちていく。
でもその方法を見つけて幸せになった風と光を見れば、きっと私にもその方法を見るけることができるんじゃないかって思う。
そうしたら、高い空を見上げてもセフィーロを思い出さなくなるだろう。
あぁ、なんて高い空。素敵だわ。
それだけ。
セフィーロと同じ蒼い、高い空なのに
あぁ、なんて高い空。素敵だわ。
たったそれだけ。
私はね、闇の中を歩くとき、心が泣き始めても処方箋なんていらないと思ってる。
この傷みの本質を伴わない人間特有の心の痛みは、私があなたとの時間を忘れていない証拠だから。
また太陽が昇れば空にあなたの笑顔がみれるから。
今でも、セフィーロを愛するあなたが心の中で生きているって空が私に教えてくれる。