La Campanella

無理無理無理無理!!

このクソじじい何言ってやがる
・・・と言いたい心と口を笑顔で抑えて目の前にえらそうに座る男に依頼された内容をやんわりと断る。

「お父様、申し訳ないのですがその日は先約がありまして。」
「そうか、引き受けてくれるか。場所はだな−」
「…お父様?ちゃんと私の話聞いておられました?」
「ダイワートビル35Fのスイートだ。」
「ですからその日は…」

「先方にはもう行くと返事をしてあるのでな、よろしく頼むよ。」

いつか必ず血の池に沈めてやるこのクソおやじー!

掴めるものを全て投げつけて書斎から飛び出して出て行く彼女を 「お嬢様、お気の毒に。」と見送る執事は物にまみれている主人に溜息を吐き医師の手配をするようメイドに言いつけるのであった。








仕事内容:婚約者訪問

かの有名な暗殺一家に肩を並べるオルキュー諸島の暗殺一家、家。 世間の噂ではその家族の仲睦まじいことこの上ない、で有名である。 現在の当主はオルゴル・3世、妻にはゾルディックの血が少しだけ流れているらしいレベッカ・
兄3人、弟2人の真ん中に生まれた唯一の女子は両親からの愛を一身に受け今年早22歳。 両親は娘のために、と彼女が4歳のときにすでに将来のお婿さんを選定していたのだ。




もう返事をしたってことは行くしかないじゃないかぁ。 きっと楽しみにしているのであろうあのキキョウさんのこと、行かなかったら悲しみのあまり殺されそうで恐ろしい。 結婚相手は生まれてこの方4回しか会ったことのない許婚イルミ・ゾルディック。

一回目…言葉を交わさずとりあえず殺気に耐える。

二回目…挨拶をしてお茶の席に着くと鋲を飛ばされる。

三回目…しつこく質問されキレてコーヒーをぶっ掛ける。念のオーラで攻撃される.



「きゃー!さんがいらしたわ!!」
そう叫び回るキキョウさんの姿を想像しながら、今日はとりあえず寝ようと思った。












「きゃー!さんがいらしたわ!!」

やっぱり・・・。

「お久しぶりです、キキョウさん。」
「本当に、3年ぶりくらいかしら。本当にきれいになられて!!嬉しいーーー!!!!ほらイルミもご挨拶なさい!」
おお…イルミ。最後に会ったときよりずいぶんと美形になったもんだ。

「ヒサシブリ。」
「…。」
心がこもってないのは相変わらずか。

「こりゃ、じゃないか。」
「ゼノ様、ご無沙汰しております。」
「おじいさま!やっと、やっとさんがお嫁に来る気になってくれたのよ!」
「おお、それはめでたいの。この間イルミもとの結婚を認めたことじゃし、さっそくという感じじゃな。」


さすがだ、ゾルディック。断りを入れる話を始める前から勝手に盛り上がってるし。

「そのお話なんですが…実は。」








ピピピピ。

「イルミか。・・・どうした?後ろから何声が聞こえるが。」
「泣き声じゃなくて奇声だよ。君さ、泥棒だって事は知ってたけど、まさかウチに盗みを働くなんて思わなかったよ。今度の依頼はキャンセルさせてもらうから。じゃッ。」
「おい、何のこと・・・。」

プッ。ツーツー


その日からの大発言によりゾルディック家ではしばらくキキョウの鳴き声を帯びた叫び声が消えなかったのだとか。














「ごめんなさい私、幻影旅団のクロロさんを愛しているのでイルミさんとは結婚できません。って言ったのよ。」
、お前な・・・。」
「安心してよ、クロロさんを殺さないで下さい!って泣いて頼み込んできたから。」
「そう易々と殺されはしないさ。」

だが次の仕事、イルミなしというのはやりづらいな、と頭を抱えた。

「それにあの場でヒソカを愛してるなんて言ってたらどうなると思う?私まで変体扱いになってたに違いないわ。 というわけだからイルミがアジトに来るようなことがあった場合には恋人の演技よろしくね。」
「悪いが演技はできない。恋人でっていうなら話は別だがな。」
「?」
「・・・おれと一緒になれと言っている。告白しているんだ、分かるか?こんなに丁寧に説明してもらえるなんて幸せだと思え。」

「?????」
さらにハテナが増えたにがっくり肩を落とすクロロ。

「まず考えてみろ、好きでもない女を部屋に入れて、読書を邪魔されているにも関わらずこんな風にずっと抱えてると思うか?本っ当に鈍いなお前は。」
自分は今、クロロのベットに座っていて、後ろから抱きしめられる形で話をしている。でもそんなのお兄ちゃんだって、お父様だってやってくれるし。

お母様だってお父様にやってもらってるし。




「んー・・・。普通じゃないの?」

のその発言と同時にクロロの自室のドアに張り付いて話を聞いていた団員から大きな溜息が漏れるのであった。